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そして、教室にダッシュで戻る。なんとか本鈴が鳴る前に戻ってこれた。ギリギリセーフだ。ガラガラと教室の扉を開け中に入ると、早速、僕を見つけた日下と土居が少し苛立たしげに近寄ってきた。
「なんだよ、真尋。どこ行ってたんだよ」
「誰かに呼び出されたりしたんじゃねぇだろうな?」
身長一八○センチを超える長身の二人に囲まれると、さすがに迫力に圧倒される。
「ち、違うよ。ちょっとトイレに……」
「なんだ、腹でも壊したのか?」
全くデリカシーがない奴らだ。僕はやたらと頭だとかお腹だとかを触ってこようとする二人の手を振り払いながら、自分の席に戻った。すると、確か机の横のカバン掛けにかけたはずのカバンが机の上に乗せられ蓋があいていた。
「あぁ、俺たちが開けた。真尋がまた変な輩から余計な物押し付けられてたら大変だからな。ちゃんとチェックしておいてやった」
「なんだよ、余計な物って。何がどう大変なんだよ」
抗議する僕に「真尋は知らなくていいんだよ」なんて訳のわからないことを言いながら、二人は悠々と自分の席に戻っていった。その後姿を見ながら、僕はほうっと安堵の溜め息をついた。
やっぱり、あいつらに見つかる前に隠しておいて正解だった。あやうく大事なチョコを没収されてしまうところだった。
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