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そして、待ちに待った放課後。二人がそれぞれ部活に行くのを見送ってから、僕は化学準備室に行った。
トントンと扉を叩き「失礼しまーす」と声を掛け、中に入る。
「そこにあるぞ」
僕が何か言う前に、五所川原先生はくわえタバコで何か書き物をしながらこちらをちらりと見もしないで、ちょいちょいと棚のほうを指差した。見るとそこには、ちょこんと僕のチョコが置かれていた。
「先生、勝手に食べたりなんかしてないよね?」
何せ、あんなにいっぱいチョコをもらう二人ですら人のチョコを奪っていくのだ。頭はぼさぼさで無精ひげを生やしてだらしのない感じの五所川原先生は誰からもチョコなんてもらえないはずだから、もしかしたら僕のチョコに手を出したかもしれない。
「誰が食うか、んなもん」
「ほんと?」
確認のために開けてみようとリボンに手を掛けると、すかさず「こら、こんなとこで開けるな。ちゃんと家に着くまでしまっとけ」と咎められた。
ますますアヤシイけれど、僕は「はーい」と返事をして箱を振ってみるだけに留めた。箱の中で、コトコトとチョコが転がる音がする。どうやらチョコは無事なようだ。
「俺は甘い物は嫌いだ。とっとと持って帰れ」
何故だかまだ不機嫌な先生に怖気づいて僕は「はーい。先生、さよなら」と声を掛けサブバッグにチョコを押しむと、さっさと化学準備室を後にした。
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