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翌日の昼休み、僕は化学準備室に向かった。五所川原先生がそこでお昼ごはんを食べることは知っている。
ノックもそこそこに扉を開け中に入ると、今日もポットのお湯をカップ麺に注いでいるところだった。
「よ、また有栖川か。今日はどうした」
「先生、僕のチョコレート返して」
「……一体、何の話だ?」
「しらばっくれないでよ! 昨日、僕のチョコレートとったでしょ!」
「何言ってるんだ。お前、そこに置いてあったチョコちゃんと持って帰っただろ?」
「家に帰って見てみたら、全部なくなってたんだ!」
「そんなの知るか。どうせぼんやりして自分で食っちまったのを忘れたんだろ?」
「ひ、ひどい。いくら僕がぼんやりしてるからってチョコを食べたかどうかぐらい覚えてるんだから!」
朝、目を覚ましたら覚えのないクッキーが枕元や口の中に転がっていた事は何度かあるが、それはナイショだ。あれは寝ぼけていたのであって、ぼんやりしてたのとは全く訳が違う。
「この部屋に置いていく時、確かに箱の中にチョコは入ってました。それを持って帰って、自分の部屋で開けた時にはなくなってたんだから、ここで無くなったのは間違いないんだ」
「お前、昨日箱を取りに来た時、箱を振って中身が入ってることを確認してたじゃねぇか。だったら持って帰る途中でなくしたんだろ」
「違うよ。僕も最初はそう思ったけど、確かにチョコはこの部屋でなくなったんだ」
「なんで言い切れるんだよ。証拠でもあんのか?」
「あれだよ」
僕は本棚の横にひっそりと置かれている小型の冷蔵庫をびしっと指差した。
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