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ナビが突然前方車両に向かって駆け出して行く
所だった。
少女が慌てて後を追っていた。
僕は正気に戻ると慌てて後に続いた。
前方車両から近付く球光体ストラムの姿に、
少女の足は止まっていた。
見るとナビは、その球光体の下を駆け抜けて行く
所だった。
球光体はそれに興味も示さず、
真っ直ぐにこちらを目指していた。
『どうしよう?』
少女が僕を見上げる。
「ちょっと待って」
僕はバイザーを掴むと心の中でナビに話しかけた。
(ナビどうしたんだ?)
トラフィックに時間がかかっているのか返答がない。
半場諦めかけた時、唐突に返信がかえって来た。
【僕は車両を止める。
その間、時間を稼いでくれ】
健闘を祈ると言う様に短く通信は切れた。
全く無茶を言ってくれる。
「大丈夫だ。ナビが列車を止めるそうだ」
心配そうに僕を見上げる少女にそう囁いた。
何が大丈夫なのかは解らないが、
少女を守ると言う決意だけは本物だった。
僕は少女の手を引き逃げる様に後方に進んだ。
がっすぐに後方から近付くストラムに、
挟まれる形となっていた。
前後を挟まれ刻一刻と近付く球光体が、
緊迫した時間を永く感じさせていた。
僕は近場の開閉扉に手をかけ人力で開こうと
力を込めていた。
そんな努力もむなしく扉は、
ぴくりとも動かなかった。
少女が手伝う様に僕の腰元を持ち支えていた。
両側から近付くストラムが間近に迫り、半場諦めかけた時唐突に車両にブレーキがかかるのわ感じた。
宙に浮いたストラムが急にスピードを増し、
前方に飛ばされて行くのが目に入った。
一瞬だけかかったG(重力)に飛ばされないよう、
少女が僕の腰にしがみついていた。
不思議な事に、慣性の法則で前方に飛ばされそうになったのは一瞬で、すぐに体を飛ばそうとするGは消え失せていた。
前方に飛ばされたストラムも空中で固定された様に停止している。
助かったのか?
僕と少女は固まった様に体を硬直させ、
前方で停止したストラムを見つめていた。
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