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それに何故か息苦しさを覚え僕は、
人形の様に硬直したままの彼女を抱え立ち上がった。
前方からナビがストラムの下を潜り抜け、
此方に駆けて来る所だった。
少女もそれに気付き僕から離れナビを迎える。
『ナビ!』
ナビはそんな少女の胸に飛び込んだ。
少女はそんなナビを両手でしっかり抱き止め、
安堵した様に呟く。
『大丈夫だった、ナビ』
ナビは無表情に頷いた。
「こちらは心配ない。
それよりそっちは大丈夫か?」
ちらりとナビがこちらを見た気がした。
少女は顔を強張らせぎこちなく頷く。
『うん』
そんなのんびりした会話に割って入った。
「それよりナビ囲まれてる。
速く逃げないと 」
ナビは白々しく耳を上げると無感情に呟いた。
「でっプランはあるの?」
僕は一瞬口ごもり提案をだす。
「とりあえず外に出て、
パイプの中を逃げるしかないんじゃない?」
見回すと車両の外を覆う透明なパイプラインの中にはストラムはいなかった。
「それはやめた方がいい」
ナビはあっさりとその提案を却下した。
「パイプラインの中は軟化エアロジェルと言う
液体の様な特殊ガスで満たされている。
息が出来たとしてもすぐに酸欠で窒息するだろう」
ナビがそう言い終わる前にその上空には、
不気味な影が滞空していた。
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