世界の信実

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その(うな)り声に似た音に吸い寄せられる様に、 辺りに充満した瘴気(しょうき)が乗車口に流れ出ていく。 段々と白霧は薄れ、それに(ともな)いパイプラインに ぽっかりと空いた大きな穴が、その輪郭(りんかく)を表し 始めていた。 そこから吸い出されるように溢れ出る煙が、 見てとれた。 それは滝のように重力に引かれ流れ落ちる、 白煙(はくえん)だった。 空気より重い気体がパイプ内を満たしてるのだろう感覚を伝えていた。 呆然(ぼうぜん)とそれを(なが)める僕にナビが話しかけてきた。 「あの穴から脱出する」 その言葉の意図を計りかねナビを見つめる。 パイプに穴は空いたものの、上空に設置された そこからは、とても飛び降りられないだろう情景が覗いていた。 バンジージャンプでも断りたい高さだ。 「心配しなくても飛び降りたりはしない。 ストラムをもう1体借り受ける」 それにしがみ付いて降りるとでも言いたいのか? もしそうだとしても、1体では全員しがみつくのは無理だ。 「1体では無理だろう?」 当然の疑問にナビが答えた。 「残念ながら僕は同時に1体しか操れない」 絶望的な作戦に死の影がちらつき始めた。 「大丈夫、考えがある」 そう言うとナビは、もう一1体近付きつつある ストラムに向き直っていた。 そのまま対峙(たいじ)する2体。 ナビの目が赤く熱い警戒色に変わっていた。 それに触発(しょくはつ)された様にストラムも動きを止め、 間合いをはかる様に停止していた。 (しば)しの睨みあいの(のち)、ナビの目が熱のこもった灼眼(しゃくがん)から、元の冷たいダークブルーに戻っていく。 どうやら決着はついた様だ。 ナビは振り返り当然とでも言う様な声を発した。 「大丈夫コントロールは奪った」 その声が示す様にストラムが不気味にナビの上空に漂っていた。
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