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僕は少女を両手で抱き抱え立ち上がった。
強張ったままの少女の背中を優しく撫でた。
「もう大丈夫だから」
少女は人形の様な白い顔で僕の瞳を見つめていた。
放心した瞳に徐々に意思の光が戻って来るのを
感じた。
意識が戻るのに合わせ生気が戻るように、
その頬を朱に染めっていった。
頬を染めながらも少女は、僕の瞳をじっと
見つめ続けた。
そんな二人を外面に痛々しい傷跡を残したストラムが、上空で待機し見守っていた。
「緊急事態だ!まずい事になった」
ナビがそんな状況を打ち消す様に叫んでいた。
「二人とも前方を見るんだ!」
ナビの声に我にかえって前方に視線を移す二人。
前方から唸る様な轟音と熱風が此方に吹き出し、
少女の長い髪を泳がせていた。
信じられない事にその轟音に合わせ、
前方車両が炎に包まれて行く。
連鎖的に次々と発火して行く客席。
こちらに向かって紅蓮の炎が雪崩の如く、
向かっていた。
―16―
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