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第1話 ごめん、起こしちゃった?
その日は女帝の誕生日だった。
僕は下部だ。一番のお気に入りって言われてるけど、どうなんだろう。
彼女の気持ちなんて、僕ごときにわかるわけがない。
彼女だけじゃない。女は謎だ。
わからない
怖い
でも何故か、気がつくとその日も僕はフラフラと女の巣窟に足を踏み入れていて、そして、得体の知れないカクテルをガンガン飲まされていた。
「おいハッピー、こっちも飲んでみろ。どうだ、美味いか?」
「はい……え……何これ、うわっ辛!」
「あーごめん、入れすぎたわ。ほら口直し」
「ん……うっ……甘っ!」
「ほら水、水」
「ああ、ありがとうございま……って日本酒じゃないっすか」
「アッハハ、ごめんごめん」
女帝のごめんは、よく出来たってお褒めの言葉だ。
おまえの顔は、少し眉を寄せた方がバランスがいいと言われたことがある。その時僕は必死に泣くのをこらえていて、彼女は微笑んでいた。その微笑みが神々しくて泣く理由を忘れてしまったのに眉は寄せたままでいたら、彼女はごめんと言って僕の頭を撫でてくれた。
その時と同じように、彼女は僕の頭を撫でた。母親が子供を撫でるような優しい手つきじゃない。指を立てて高速でクシャクシャってやつだ。別の腕も伸びてきて、皆が僕を撫でてくれた。
可愛がられているのかもしれないけれど、これじゃまるで犬だ。
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