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三人が入った居酒屋は、さすがに評判になるだけあって、出される料理はどれもこれも興味を惹かれる見た目と味で、存分に楽しませてくれた。
初めはぎこちなかった空気も、美味い料理と酒を前に、次第に弛み始める。
勇次はさすがに料理人らしく、一つひとつを吟味するような様子で味わっていた。
「うーん、ここのも確かに美味しいけど、俺はやっぱ『たちかわ』のが好きだなー。特に勇次さんの鯛の蕪蒸し! アレあれ旨かったなー! 毎日でも食べたいもん!」
酒がまわって来たのか、いつも以上の陽気さで廣瀬がはしゃぐ。
「そんでさ、これ凄い美味しい、好みの味!って思ったのを後で佳人君に訊いてみたら、それってたいてい勇次さんが作ってるんだよね~。俺もう凄い感動しちゃって!」
廣瀬の熱い賞賛を受け、勇次はあぐらをかいた両の膝頭に手を置いた格好で「光栄です」と言って頭を下げた。
酒にめっぽう強いらしく、早くもビールを三本も空けているというのに、まったく顔に出ていない。
勇次の空になったグラスにビールを注ぎながら、廣瀬がそつなく店の者に追加をオーダーする。
「すみません」
「いいのいいの、今日は俺たちの奢りだかんねー、どんどん飲んでよ!」
恐縮する勇次に、廣瀬は芳崎の肩にしなだれかかりながら上機嫌で返した。
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