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「芳崎さんと蓮見は一緒に住んでいるんですか」
思いがけない質問に芳崎はギクリと手を止めて、思わず勇次を見つめた。蓮見とは佳人のことだ。おそらく先ほど「たちかわ」の前で佳人と話していたのを聞かれていたのだろう。
しかし何故このタイミングでその質問なのか。まさか佳人と特別な関係にあることを気付かれているのだろうか。
きわどい質問に戸惑いながらも、芳崎は平静を装って、努めて軽い口調で返した。
「そういう訳じゃないけど、彼は高校の後輩で、割と気が合うんでよく会ったりしてるんですよ。可愛い後輩ってやつです」
「そうなんですか」
勇次は意外そうな声を出したが、表情に乏しいので、芳崎の回答を信じたのかどうなのかは判らない。
次に廣瀬に目を向けて、勇次は質問を続けた。
「廣瀬さんも蓮見の家に行くことはあるんですか」
「俺? 残念ながらないんですよねー。行ってみたいんだけど色々とガードが固くって」
廣瀬が芳崎からお銚子を奪い返しながら、意味ありげに芳崎を見る。完全におもしろがっているのが判った。
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