すべて愛しさのせい

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 けれど本当にそんなことを聞かされたらきっと冷静ではいられない。佳人を詰ってしまうかもしれない。そんなことは絶対にしたくないのに。自分だけは佳人を傷つけないと心に誓ったのに。  本当に自分は佳人だけなのだと叫びたい気分だった。佳人がいなければ、何もかもが色褪せてしまう。  どうやったらこの狂いそうな恋情が届くのだろう。ほかの人が割り込む隙など、一分もないくらい、心の全てが佳人によって占められているのだと、どうやったら佳人に本当に伝わるのだろう。  半ば途方に暮れて佳人を見つめていると、佳人はキュッと唇を噛み締め、ついに何かを決断したように芳崎の手から腕を引き抜いた。  それから寝室に入って行き、何か小さなものを手にして戻ってくると、再び芳崎の前に座り直した。 「――あの、……こ、コレ、」  おずおずと差し出されたのは、綺麗に包装された小さな四角いものだ。 「誕、た…誕生日の……」 「………は?」    思わず気の抜けた声が出た。しばらくは現実感が戻って来ず、ぼんやりと佳人を見つめてしまう。奇妙な沈黙が落ちた。  その小さな四角いものに向かって伸ばされる自分の手を、別の自分が見ているような感覚で受け取る。  だがそのときに触れた佳人の指先の、氷のような冷たさが、芳崎を現実に引き戻した。
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