すべて愛しさのせい

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すべて愛しさのせい

 待ち合わせというのはなんとなく気が急くものだ。  特にその相手が大切な恋人ともなると、芳崎の足は自然と早足になる。  約束の時間より少し早く駅前の広場に着くと、その中心に置かれた円形のベンチに佳人が座っているのを見つけて、芳崎はホッと息をついた。  佳人はとても時間に正確で、よほどのことがない限り待ち合わせに遅れることはない。  それどころかこんな風に芳崎が早めに着いても、佳人の方が更に早く着いている、ということも少なくはなかった。 (一体いつから来てたんだ)  芳崎はふと足を止めて、混雑する人ごみのなかで、ぽつんとベンチに座る佳人の姿を見つめた。  携帯を膝の上で両手で握り締めて、じっとその画面を見つめたり、少しだけ顔をあげて不安そうに目をさまよわせたりしている。  その姿はどこか所在なさげで、今でも独りでいるときは、こんなにも心細げな様子なのかと、思わず胸を掴まれるような気持ちがした。  そうした印象は、彼の繊細な容姿も無関係ではないような気がする。  佳人は仕事で邪魔にならないように肩くらいまで伸ばした髪をたいてい後ろで軽く結っているので、その顔の小ささが際立つ。そして首が細く色が白いので、どこか中性的な印象があった。
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