これからの季節を、ずっと 4

3/5
488人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
 つないだ手がほどかれる。そっと動いた蒼太の手が、私の背中を抱き寄せる。  ふんわりと優しく。つらかったことも哀しかったことも、蒼太の知らなかった私の十年も、全部すべて包み込むように。 「あったかい……」  蒼太の胸でそうつぶやいたら、私を抱きしめる手に少しだけ力を込めて蒼太が言う。 「このまま連れ去ってもいい?」  ふふっと笑って、私は蒼太の体をそっと離す。 「ごめんね? まだ勤務中なの」 「ムードないなぁ」  苦笑いする蒼太に笑いかけ、ふと顔を上げる。 「あれ?」  額に触れる冷たいもの。 「雪?」 「ほんとだ」  ふたり同時に空を見上げる。ビルの隙間の黒い空から、白い雪がはらはらと舞い落ちてくる。  ああ、前にもこんなことあった?  顔と顔を寄せ合って、ドームの中に降る雪をふたりで見つめた。  ぎこちなく手を握り合いながら、季節外れだね、なんて言って笑った。  そんなことを思い出して視線を下げると、私のことを見ていた蒼太が小さく微笑んだ。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!