キュウドウブ! 1本目①

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 咲園さんはバッグから次々と教科書を取り出し、「ちゃんと見せてあげるからね!」とフンフン意気込んでいた。まるで犬みたいだな、なんて失礼かな。 「分からないことは何でも聞いてね!」 「ありがとう」  僕は配られるプリントをまとめながら窓の外を眺めた。窓際の後ろから二番目、結構良い席だ。 「平和な高校生活になりそうだな」  僕はそう思っていた。  少なくとも、その時までは。           * 「部活動ですか?」 「あぁ。一応見ておいた方がいいと思って」  氷ノ宮学園での初日を難なく終えた僕は放課後、職員室に呼び出されていた。 「部活動は強制ではないけど、うちは文化部、運動部共にそれなりの実績を残しているんだよ。この学園には――」 「あの」  僕には高校デビューをするにあたって、決めていたことがひとつある。 「すみませんが、遠慮します」 「どうしてだい?」  音無先生は不思議そうに首を傾げる。 「中学の頃はひたすら部活に打ち込んでいたので、高校ではもっと自由に時間を使いたいと思って」 「あぁ、なるほど……」  歯切れの悪い返しだった。その理由はなんとなく分かるが、これは僕の問題だ。 「残念だな、パンフレットもいくつか用意しておいたのに」 「ごめんなさい」 「いや、いいんだ。放課後の時間をどう使うかは君の自由なのだから」     
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