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音無先生は笑っていたが、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。人の期待を裏切るのは、たとえ互いに悪意が無くても胸が痛む。
僕は深く頭を下げ、職員室を後にした。
「はぁ……」
廊下を歩く足取りは重かった。だけど自分の意思を伝えられたことは大きい。音無先生は真面目そうな人だから、きっと分かってくれるはずだ。
帰る前に少し校内を探索してみようと、僕は下駄箱へ直行せず、階段を上がった。また迷子になるわけにはいかないからね。
二階の窓からグラウンドを見下ろすと、サッカー部がリフティング練習をしていたり野球部が走り込みをしていたりと、なんだか賑やかだった。協力し、競い合える仲間がいると、部活動は楽しい。
楽しい、はずなんだ。
「あれ」
階段を上がっていると、いつの間にか屋上まで来ていた。だけど扉は閉ざされているはず。特別な用事がある時以外は開かないのだと咲園さんが教えてくれた。
漫画やアニメではよく屋上でお昼を食べているけれど、現実はそうもいかないよね。そんなことを思いながら試しにドアノブを捻ってみると
「げぇっ!」
開いた。
手ごたえもなくあっさりと。
僕は動揺した。だけど、開いた扉の隙間から吹き込む風には逆らえなかった。
扉を開け放った先に待ち受けていた光景に、僕は息を呑む。
「綺麗だなぁ!」
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