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「それは秘密です」
男子生徒は平然と云ってのける。当然、音無は怪訝に思った。
「それじゃあ無理だよ」
「では、建前的に名前を弓道部にします」
「君、堂々とすごいこと云うね」
「音無先生、顧問としてどうでしょう」
「ま、待って、待って。ええっと、つまり君は『弓道部』として部活を設立して、『求動部』としての活動をするってこと?」
「はい。なんならカタカナで〈キュウドウ〉にすればいいかもしれません。そうしましょう」
ブレないな、この子。
「そもそも求動部って何だい」
「それは秘密です」
話が進まない。
「わ、分かった。この件は一旦、先生が持ち帰ろう。ところで部員はいるのかい? 最低でも五人は部員が必要なのだけど」
「四人はいます」
そう云って男子生徒は名簿を差し出した。音無は一応、目を通す。
(二年生が二人、一年生が二人……二年生ではなく、一年生の彼が申請に来ているのか)
自分たちは姿を現さず、入学したての一年生に部活創設の申請手続きをさせる二年生もいかがなものかと、音無は少し呆れた。
「あと一人はどうするんだい?」
「当てはあります。ご心配なく」
素っ頓狂なことを平然と云うわりに、物分かりは良い。
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