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男子生徒は胸ポケットからスマホを取り出した。パッと明るくなった画面に表示された再生ボタンが押されると、先ほどの音無の台詞がリピートされる。
「では、また来ます」
最後に、と彼は付け加える。
「転校生、どんな奴が来るか楽しみですね」
その背中を見送り、音無は挑発に乗ってしまったことを後悔した。
しかし、全く無計画で返事をしたわけでは無い。
音無には確信があった。仮にあの男子生徒が骸骨館の存在を知っていたとしても、この恋を成就させることは絶対に出来ない、と。
「あんなもの、せいぜい学生のお遊びさ」
音無は申請書と部員名簿をデスクの引き出しに入れた。部員名簿に並ぶ名前は全て聞き覚えの無いものばかりだったが、一年生……先ほどの男子生徒の名前だけは、しっかりと記憶した。
白神天馬(しらがみてんま)。
音無は数回、彼の名前を小声で唱えた。
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