キュウドウブ! 1本目①

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キュウドウブ! 1本目①

 学生にとって五月というのは、最も引っ越しに向いていない月だと僕は思う。  三月下旬から四月にかけて美しく咲き誇っていた桜の花はとうに散り、葉桜が日差しを浴びてキラキラと輝いている。入学式から一カ月が経ち、新入生たちもだんだんと新たな学校生活に慣れてくる頃なのだろう。  僕だってそうなる予定だった。近所のお兄さんから譲ってもらった学ランに身を包み、平凡な田舎の公立高校で入学式を終え、これから始まる高校生活に胸を躍らせていた。  躍らせて、いたのだ。           * 「うーん……」  枕元で鳴り響くスマホのアラームを止め、僕はむくりと上半身を起こした。カーテンを開けると、雲一つない青空が覗く。ちょうど家の真正面にある公園の桜も、青々とした葉を揺らしていた。  一昨日まで見ることができた水田の風景はそこに無い。こうして窓の外を見ると、改めて自分が新たな地に来たことを実感する。 「なっちゃーん、早く起きないと遅刻しちゃうわよ」 「はーい」  僕は背伸びをして部屋を出る。  まだ慣れない階段をゆっくり下りていくと、リビングからは空腹を刺激する良い匂いが漂ってきた。 「おはよ! 早くご飯食べちゃってね」     
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