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だけど、後ろばかり見ていたって仕方ない。
新しい学校までは最寄りの駅から電車で二駅。そこから徒歩十分と、割と近い場所にある。満員電車にぎゅうぎゅうと乗り込むと、自分と同じ制服を着た生徒がちらほらいた。とりあえず迷子になる心配はなさそうだ。
「ぷはーっ!」
鮨詰めの車内から解放された僕は、人の流れに身を任せて改札口を抜けた。同じブレザー姿の生徒たちの団体にトコトコ付いていくと、建物が見えてきた。
「あれか」
私立氷ノ宮(こおりのみや)学園。
校舎の外観は田舎の公立高校と比べものにならないくらい大きくて清潔だ。まだ設立して十数年ほどしか経っていないだけはある。
「ええっと……」
脱いだ靴は、とりあえず名札の無い下駄箱に突っ込む。バッグから出した真新しい上履きは、歩く度にキュッと音がした。
校内地図をチェックしながら廊下を進む。右に曲がって、それから真っ直ぐ、そしてまた左に……あれ、ここはどこだ。
「あれー……?」
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