0人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
確かに地図を見ながら進んでいたはずなのに、辿り着いた場所は屋外のゴミ捨て場だった。何、いつ外出ちゃったの。とにかく戻ろうと、踵を返して来た道を戻る。右に曲がって、それから真っ直ぐ、そしてまた左に……ダメだ、またよく分からない場所に来てしまった。
同じタイミングで登校してきた生徒たちの喧騒は遠い。どうやら僕は、校内でも人通りの少ない場所に辿り着いてしまったらしい。
どうしよう、誰か道を尋ねられる人は――
「君、どうしたの?」
「わぁっ!」
突然肩を叩かれ、僕は思わず声を上げた。
「ありゃ、びっくりさせちゃった? ごめんね」
振り返ると、そこには黒髪の女子生徒がにっこり笑みを浮かべて立っていた。緩く結ばれたサイドテールがふわりと揺れる。
「急に声かけちゃったね。校内で地図片手にうろうろしてる人って見かけないから、何か困ってるのかなぁって」
眩しい笑顔の子だと思った。普通の人が笑ったって、ここまでキラキラ輝いて見えない。
「どこに行きたいの?」
「職員室に……」
「あ、それなら一階の東側。ここは西側だから、真逆だね」
「えっ、そうなの?」
「うん! 良かったら案内するよ。まだHRまで時間があるし、何の予定も入ってないから」
そう云って女子生徒はぴょこんと頭を下げた。
「あ、申し遅れました! 私、咲園蘭子(さきぞのらんこ)です! さ、行こう!」
咲園さんは僕の制服の袖をぐいぐいと引っ張った。
最初のコメントを投稿しよう!