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こうして僕は咲園さんの案内で、なんとか職員室に着くことができた。その間はずっと、心臓がどくどくと激しく鳴りっぱなしだった。
彼女、美人だ。横顔を見て思った。白い花の髪飾りは幼い印象を受けるけど、鼻も高いし、目も大きい。はっきりとした顔立ちで、低い位置で結ばれたサイドテールがぐっと素材の良さを引き出している。そして何より、笑顔が魅力的。
「ありがとう、助かったよ」
職員室に入る前に、僕は頭を下げてお礼を云う。彼女は「どういたしまして」と一言告げて、パタパタと階段を上がっていった。美人に道案内してもらった、それだけで今日という日は最高の一日になるのだ。
「失礼します」
職員室に入ると、入り口近くにいた中年の女性教師と目が合った。
「今日からこの学校の生徒になりました、転入生です」
すると女性教師は「あぁ!」と頷き、窓側に声を投げかけた。
「音無先生、転入生の子ですよ」
音無と呼ばれた人は、まだ若い男の先生だった。第一印象はモヤシ。痩せ型で背が高く、色が白い。
「はじめまして、大宮夏彦(おおみやなつひこ)君だね?」
声は思っていたよりもずっと低く、物腰は柔らかい。
「君が所属することになる一年B組の担任・音無颯太だ。よろしく」
「よろしくお願いします」
「では、教室に行こうか」
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