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教室の窓にうつる空は、まっ青に深い色。太平洋のどまん中みたいな晴れ。右を見ても晴れ、左を見ても晴れ、どこまでいっても晴れ。正真正銘の炎天下。三階の校舎にかかる木立でみんみんゼミたちが、おい、夏がはじまったってよ! マジかよホントかよ? どいつもこいつもうかうかすんな! ガハハハッ! と大合唱をしていた。
「まさか、ユウちゃんも同じこと信じてるなんておもわなかった」
ぼくがおもってた以上にメジャーな子供だましなのかもしれない。空の色、海の色――。
佑二は、「別に信じてたわけじゃねえよ。そうだったらいいなあ、程度というか」と目のはしをポリポリかいた。
「姉ちゃんと似たようなこといってる。ユウちゃんなら、きっと国際サンタクロース協会に入会できるんじゃない」
「はあ? なんだそれ」
「なんでもない」
「なんだよ、いえよ!」
「さあね」
トボけるぼくの背後で、佑二の指がポキポキと鳴った。
身の危険をかんじ、ヤバイ! と身をかわそうとしたやさき、両腕を押さえつけられていた。視界に佑二の白いワイシャツがひるがえる。目の前が白と黒に反転し、のどもとに圧迫感。空気のカタマリがブワッと口からこぼれでた。チョークスリーパーホールドだ。もがき、ハズレかかった佑二の腕がぼくの口をふさぐ。あえぐ息に、にじむ涙。洗いざらしのワイシャツ。佑二のにおいだ。
「ちょっと、あつくるしい! 顔が近い! とりあえずはなれて」
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