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現実は、いつもぼくの都合などおかまいなしで、ことわりもなく、どんどんかわっていってしまう。玉手ばこをあけた浦島太郎とおんなじ。小さな身長のことだって、姉ちゃんとのケンカだって……ぼくはいつだって、玉手ばこのけむりみたいな、どうにもならない現実にもやもやしてばっかりだ。
バスケットシューズのひも先を持つ。そのままブンと一回転させ、宙にほうりあげた。落ちるバッシュを両手でキャッチ。うん。いろんなことがこんな風に一回転して、結局元どおりになってくれればいいのに――。
「イツキは単純で、しあわせそうだよなあ」
バッシュのナイスキャッチを見て、佑二がいった。
「なんか、それバカにしてる? もしかして」
「ああ、している。オオイにしている」
「ひっどいなあ。ユウちゃんより、ぼくの方がよっぽどいろいろ悩んでる」
とつぜん、目のまえがはじけた。何ごとかと首をすくめる。佑二がデコピンをしたのだ。
「なにマジメにかえしてんだよ。はやんないぜ、そーいうの。悩んでるとか」
おもわず黙ってしまったぼくを一瞬見つめてから、
「こら、ちょこんとした目をするな!」
と佑二はぼくの頭をはたき、スタスタといってしまった。
「ええ? なんだよ。ちょっと、まってよ!」
やりたい放題の佑二の背に、グーを突きつけながら追いかけた。
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