Yuuki Side2:三つ子の「魂」、とりあえず今は17まで

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朝の日差しに照らされる。 教室では現代文の授業中で、近代文学史の動向が古代の唄のように脳内をすり抜けていく。 眠い。 我が空手部では、今日はいつもの朝練よりもさらに早い時間に集合がかけられていた。来週の公式戦に向けて気合を入れ、朝稽古に励む部員たち。 おれは朝5時に起きたことだけで、もう来週を含めたここ1か月分くらいの達成感を味わってお腹いっぱいだ。眠い。ただひたすらに、眠い。 「ここまでの内容を各自プリントに整理しなさい。文壇の動きは黒板の年表を見て整理するように。」 ばさばさとプリントをめくる音が響き、なんとなく顔を上げた時に、前の方の席のヒナが視界に入った。 真剣な表情で説明を聞きながら、資料集にマーカーでチェックを入れている。黒板の内容を見ながら、流れるようにプリントに文字を書き込んでいる。ヒナは相変わらず真面目で、一生懸命だ。昔からずっと。ふっと顔がほころんで、それをごまかそうと俯いたら本格的に眠気が押し寄せてきた。 ・・・許せ、先生。あなたの生徒は朝の5時に叩き起こされ、鬼のような顧問にしごかれた上でここにいるのです。この睡眠は不可抗力。教師たるもの、生徒の見えない努力を汲むべきでしょう。 おれは潔く意識を手放した。
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