Yuuki Side2:三つ子の「魂」、とりあえず今は17まで

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風が頬に当たる。 何かが頭の浅いところで響いている。チャイムだ。そう思うのと、頭に鈍い感覚が訪れたのが同時だった。 バシッ、と乾いた音が耳の奥から響き、紙の重みが加わる。 咄嗟に顔を上げると、鬼のような形相をした国語教師がおれを見下ろしていた。 相変わらず教師が板につかない、高校生がそのまま背だけ伸びて背広を着たような河野先生。おれたちは親しみを込めてコウちゃんと呼んでいる。 「瀬戸。おれの授業でいびきかいて寝るとはいい度胸だな。」 「コウちゃん、それ教師のセリフとは思えない。」 「おまえが教師を語るな。起こしても起こしてもぐーぐーと…。寝ているときまでうるさいなんてもはや公害だぞ。今日の授業の分、明日までにまとめて来い。」 コウちゃんは青筋を浮かべた顔でおれを睨んで、プリントの束を机に叩きつけた。相変わらず大人げがない。クラスメイトにからむヤンキーか、おまえは。 「生徒を公害扱いとか…。っていうかこの課題、今日の授業分より明らかに多くない!?」 寝起きの頭を何とか動かし抗議の言葉を探すが、とりつく島もないコウちゃんはさっさと教室を出て行ってしまった。 今日の居眠りの代償は思ったより高くついた。おぼろげに覚えている夢も、あまり愉快なものではなかった気がする。でも、悪い気分ではなかった。楽しい夢じゃなかったけど、大切なもののような気がした。朝練で使い果たしたと思っていたエネルギーが少しずつ湧いてくる気がする。
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