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歩く道すがら青年のランプによって照らされるのは無数の人影。老いたものもいれば若いものもいる。男もいれば女もいる。だが、どれもが何処か虚ろなガラス玉のような瞳をしてガラス張りの箱の中に収められていた。ランプの淡い光に物言わぬ彼らの顔がぼんやりと照らし出されて通路は何処か薄気味悪い。
「……これは……」
「ああ、驚かせてしまったみたいだねえ。これは商品だよ」
「商品? 」
「そう、ウチはこれでも人気な店でね、対面販売以外にもいろいろとやっているんだ。
そこで注文されたモノさ。形を作ってこれから人格プログラムを入れるんだ」
青年曰く、この人ノ形屋で創られるモノはすべてオーダーメイドで、これらのモノはあとは“中身”さえ入れれば完成するのだという。
願い通りの姿形
願い通りの性格
どうやら、噂は本当だったらしい。これならばきっと……きっと…私の願いもかなう。
そう男は思った。
「では、本当に願い通りのモノができるのだな」
「ええ、これからそのことについてお話しするのでしょう? お客さん」
青年は、食い入るように青年を見つめる男をちらりと見て嗤った。
案内されたそこは、奥まったところにある書斎のような部屋だ。青年に勧められてソファに座った男は興味深げにその部屋を見まわす。外の古い倉庫然とした建物に反して、木製の家具で統一され、整理され尽くしたというようなどこか人間味のない綺麗な部屋だった。
「どうぞ。粗茶ですが」
「いや、ありがとう」
そして、静かに紅茶とお菓子を配る少女を男はちらりと盗み見る。
美しい少女だ。鋼を思わせる銀灰色の髪に碧玉のような瞳。人形のように端麗な顔立ちをしている。その上、淡々とした所作と無表情さが相まって無機質さを男は感じた。
「おや、その子をお気に召したかな? 」
「い…いや、ただ美しいなと」
「だ、そうだよ? ファルシュ」
「お客様。お褒めに預かり光栄です」
青年は楽し気に笑みを浮かべ、少女はこちらに向かって流れるように一礼した。
その様子に、気まずさを覚えて男は誤魔化すように笑みを浮かべる。
「さて、雑談もこのくらいにして商談と行こうか。ねえ、お客さん」
そんな男の様子を察したのだろうか、青年はパンと手を叩いて笑みを深くした。
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