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ポンというやわらかい音とともに、それの頭が窓ガラスにぶつかった。
目は眠っているのか、閉じたままだ。
視界のジャマなので、窓をあけて追いはらうことにした。
だが、風にのったユルキャラは、部屋の中に流れてきた。
くるりと空中で回転すると、宙に浮くのにあきたのか、僕の部屋の畳に腹ばいになって止まった。
「な、何してるんだボルケーナ。親しき仲にも礼儀ありだぞ!」
この街のユルキャラ。
ボルケーナ。
いわゆる烈火怪獣、または業火の女神。
宇宙概念捕捉率……通常物理学ではありえない現象を起こす、魔法のような力。
未来から過去に向かって流れる、現在を形づくる情報をとらえ、使う力のことだ。
僕たちの世界では、約20年前に突然あらわれた力。
何万人かに1人。それまで何の変哲もなかった人たちが、その力をあつかえるようになった。
いわゆる異能力者になった。
今や、同じような存在は世界中にいる。
中にはその力を平和のために使う人もいて、そういう人々はヒーローと呼ばれている。
ボルケーナは、異能力者とは大分違う。
今よりも世界全体にそれが少なかった遥かな過去、何万年も前に、その捕捉率を人々の祈りという形で体内に貯めこんできた種族なんだ。
貯め込まれた力は凄まじい。
現代に現れた当初は、世界を恐怖のどん底におとしいれれた……。
らしいけど、今はすっかりなれてしまった。
今では、この街に住むただのおせっかいだ。
ちなみに、クリスチャン。
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