3人が本棚に入れています
本棚に追加
人間は手足をリラックスさせて広げて寝るのを『大の字になって寝る』というけど、ボルケーナは『米の字になって寝る』
「つまみだしてやる! 」
腹がたった僕は、ボルケーナの首の後ろをつかみ、力いっぱい引っぱった!
皮がビローンとのびる。熱くはない。
中の粘土のような肉をにぎりしめ、頭を上げさせた。
「苦しい苦しい! 首がしまる! 」
ようやくボルケーナが口をきいた。
「ネコつまみをしていいのは子ネコだけ! 大人にしちゃダメ! 」
そのままドタンバタンと体をゆするので、僕は手をはなしてしまった。
「ふひ~。居眠りしてて悪かったよ」
首をさすりながら、怪獣は後ろ足でたち上がる。
そして翼を、風船の空気をぬくように小さくした。
「わたしは悩んでいたんだぞ!
……でも、行き詰ってたんだ。気分転換でいいや。
なにか悩みがあるなら、きいてあげるよ」
ボルケーナは、にこやかにそう言った。
僕は、絶望のあまり天をあおいだ。
「オ~。僕の悩みが気分転換だなんて! 」
「おばさんに任せなさい! 」
ボルケーナはそう言って、ドラム缶のような体の、ありもしない胸を張った。
この人、45億歳の熟女なんだ、と言っていた。
まあ、一人で悩むよりはいいだろう。
「きのう、商店街を歩いていたんだ。
教会の前を通ったとき、オルガンの曲が聞こえた」
海の近くには、港町として発達した商店街がある。
小さな店がほとんどだけど、必要な物はだいたいそろう、いわゆる地方都市だね。
教会は、その中心に、おととしできた。
イギリスの古い教会をイメージしたという、クリーム色の石をつんだ小さな建物。
十字架をのせた円錐形のてっぺんを持つ塔が、付近の建物よりちょっとだけ高い。
「その曲が、『たんたんタヌキ』の曲だったんで、歌ったんだ」
たんたんタヌキの金玉は
風もないのにプ~ラプラ
それを見ていた親ダヌキ
おなかを抱えて わっはっは~
最初のコメントを投稿しよう!