3人が本棚に入れています
本棚に追加
『たんたんタヌキ』と同じ音楽のはずなのに。
その歌は荘厳の2文字を、僕の心にきざんだ。
こういうのを透き通るような歌声というんだな。
僕は自然と拍手していた。
「すごい! すごい! 謎がとけた! 」
ボルケーナは一曲歌えて、満足そうだった。
そして、僕との仕事に取り掛かる。
「まだまだ。ただあやまるだけじゃだめだよ。
白河ちゃんは、心のキレイな人だからね」
うん。それは分かってる。
「ただ謝っても許してくれるわけがない。
ちゃんと心の清らかさを見ぬいてくる」
それは……どうにかして、しめせるものなの?
「すぐできるものじゃないね。街に落ちたゴミを拾い続けるように、地道に続けていくことさ」
そうか! じゃあ、さっそく街にでよう!
ゴミが落ちているなら、人どうりの多い商店街かな?
意気揚々と、そう思ってたんだけど……。
「チリ一つ落ちてない! 」
ゴミと人どうりが比例してない!
ボルケーナも驚いた。
「珍しいこともあるもんだ! 良いことだけど!
あ、そうか。
さっき青年団が掃除してたな」
これじゃあ、地道に『心の清らかさポイント』をしめせない!
こまった……。
その時、1台の自転車が走ってくるのが見えた。
それにまたがっているのは、黒くて長い髪をなびかせた少女。
彼女が着た白いワンピースは、まるで白百合のよう。
白河 明依子その人だ!
「ネ、ね、ね」
僕は、あわてて呼び止めようとした。
でも、白河は僕を一ニラミするだけで走り去った。
ああ、生きる希望を失った……。
「そんなに白河ちゃんが好きなの? 」
ボルケーナは当たり前のことを聴いてくる。
「好き! 大好き! 彼女がいるから僕は世界の美しさを信じられるんだよ! 」
「あの子はカトリックだからね。本物のシスターさんになったら結婚できないよ? 」
また当たり前のことを。
……ある日、図書館でキリスト教の本を読んだ時の絶望が、今も胸をえぐる。
でも、それでも……。
「彼女の戦いは僕の戦いだ! 」
最初のコメントを投稿しよう!