最終章 七里ヶ浜

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あの日と同じ鎌倉の海。 今日はやたらと天気が良くて、眩しくて目を開けていられない。 日本人にしては色素の薄い僕の瞳は強い日差しが苦手だ。 鎌倉に、また桜の季節が来ようとしていた。 これくらいの時期が一年で一番紫外線が強いらしい。 まだ冷たい海の水に半分浸かりながら、日焼け止めクリームを持って追いかけてきた幼なじみを思い出していた。 そこへ大きな波が来た。 沖へ向かってパドリングをしながらタイミングを測る。 今だ!! サーフボードの上に立ち上がると、全身で波を感じた。 板の下から大きくうねるように僕の体を押し上げる波に、鳥肌が立つ。 乗れた!! そう思ったのはほんの数十秒。 あっという間に足を滑らせて、波間に放り出される。 上も下もわからない水の中。 海面から顔を出すと慣れた手付きで右足から伸びるコードに手を伸ばし、その先に繋がっているボードを引き寄せた。 そしてまた漕ぎ出す。次の波に向かって。
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