最終章 七里ヶ浜

5/35

195人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
「髪の毛も、潮水で痛むからちゃんとトリートメントしてね。ずいぶん色が抜けてるよ」 「いいよ、元々こんな色だし。それよりどう?びっくりした?」 僕はハルに向かって、少し得意げに言った。 「うん。碧樹が海に入っている所見たのなんて十年ぶりだよね。サーフィンやってるってどうして教えてくれなかったの?」 「上手くなってから見せたかったんだ。ハルのボードを使いこなせるようになってからね。 それにほら、これ」 僕は右足に巻きつけていたリーシュコードを外してハルに見せた。 「それ、私のリーシュコード?」 「うん、俺のお守り」 「どうしてそれがお守りなの?」 「これはハルをこの世に繋ぎとめてくれた命綱だから」 あの時、ハルを探して灰色に渦巻く波の間を必死に泳いでいた。 ふいに視界に現れた白いサーフボードにたどり着き、このコードを手繰り寄せた時。 その先にやっと見つけたハルの姿を、その光景を。 僕は一生忘れないだろう。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加