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「髪の毛も、潮水で痛むからちゃんとトリートメントしてね。ずいぶん色が抜けてるよ」
「いいよ、元々こんな色だし。それよりどう?びっくりした?」
僕はハルに向かって、少し得意げに言った。
「うん。碧樹が海に入っている所見たのなんて十年ぶりだよね。サーフィンやってるってどうして教えてくれなかったの?」
「上手くなってから見せたかったんだ。ハルのボードを使いこなせるようになってからね。
それにほら、これ」
僕は右足に巻きつけていたリーシュコードを外してハルに見せた。
「それ、私のリーシュコード?」
「うん、俺のお守り」
「どうしてそれがお守りなの?」
「これはハルをこの世に繋ぎとめてくれた命綱だから」
あの時、ハルを探して灰色に渦巻く波の間を必死に泳いでいた。
ふいに視界に現れた白いサーフボードにたどり着き、このコードを手繰り寄せた時。
その先にやっと見つけたハルの姿を、その光景を。
僕は一生忘れないだろう。
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