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そして今、座っているハルの後ろにポツンと置かれた車椅子に目をやると、その視線に気づいたハルが言った。
「あの台風の日に、碧樹が助けてくれたって聞いてね」
「うん」
「ちょっと信じられなかった」
「なんでだよ」
「だって…まず碧樹が海に入ったの?」
「入ったよ」
「入ったとしてね、あの大荒れの海を泳いだの?」
「泳いだんだよ。ってか忘れた?俺も元水泳部!毎日どんだけ泳いでいたと思ってんの」
「そうだけど、プールじゃないんだよ。あの海だよ」
そう言って目を細めてハルは海を見つめた。
今ハルの目に映っているのは、きっとあの日の海だ。
「台風が行った後の海でサーフィンをしてみたかった」
ハルは遠くを見つめたまま話し始めた。
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