最終章 七里ヶ浜

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「湘南の波はいつも穏やかすぎて、少し物足りなくなっていたの。見たことも無い高い波にわくわくして、喜々として海に乗り出したんだけど、私が思っていたような波とは全然違っていた。 風も強くてうねりがあって。飲み込まれそうな大波に怖くなった。 仲間がどんどん引き上げて行くのを見て、近くにいた理恵が戻るよって合図をくれて。 一緒に戻ろうとした瞬間に後ろから大きな波が来て、何も見えなくなった。 必死に海面に出て、ボードに乗ってしがみついてるうちにどんどん流されて。 これ以上沖に出たら戻れないと思って必死にパドリングしたんだけど、全く進まなくて。 どうしよう、どうしようって焦っているうちに高波にひっくり返されて。 とうとう溺れちゃった。自分が溺れるなんて、思ったことも無かったのに。ほんと、バカだよね」 「あの時さ、寝てたんだ俺。 電話が鳴って、ハルだと思って出たら宮内でさ、『春陽が戻ってこない!どうしよう』って」 「うん」 「で、焦ってそのまんま家を飛び出して、チャリで五分でここに着いた。どこをどう走ったのか思い出せないんだけど、俺史上最高速度だよ」 「確かに」 あとで昂太に話したら「瞬間移動したんじゃね?」と真顔で言われたんだよな。
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