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「砂浜に立ってた宮内に、どのへん?って聞いて指差された方に泳いで行ったんだ。なんも見えなかったけど」
「無茶だね」
「うるせぇ」
「寝ぼけてたんでしょ」
「んなわけあるか」
「だって、自分だって死んじゃったかもしれないんだよ」
「いいんだよ、助かったんだから」
「レスキュー待とうとか思わなかったわけ?」
「全く。てか、俺がハルを助けたかったんだ」
「だけどそんなことして、碧樹が死んじゃったらおじさんとおばあちゃんに申し訳なさすぎるよ」
「ハルだけ死ぬよりよっぽどいいよ。それにあの時さ…」
僕はこの話をハルにしようかずっと迷っていた。
他の誰にも話したことは無かったし、ハルは現実的な考えの持ち主なので笑われる可能性を捨てきれない。
あの時の自分はどうかしていたかもしれないから、笑われてもいいかという気持ちになって、感じたままに話すことにした。
「信じないかもしれないけど」
「うん?」
「後ろから波が助けてくれたんだ」
「え?」
「ボードにハルを乗せて押しながら泳ぐ俺を、後ろから波が押し戻してくれてさ。急に体が軽くなって、あの時、すぐ近くに母さんがいたような気が…した」
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