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自信なさげに言う僕を笑い飛ばすかと思ったけど、ハルは大きく頷きながらパンっと手を叩いた。そしてそのまま両手を握りしめて言った。
「碧樹!きっとそうだよ。碧樹のお母さんが助けてくれたんだよ」
「やっぱりそうかな」
「うん、絶対そう。そうかぁ。私が助かったのは、碧樹と碧樹のお母さんの合わせ技だったんだね」
「うん…そうかもね」
ハルは海に向かって手を合わせると
「碧樹のお母さん!ありがとうございました」
そう言って目を閉じた。
「俺には?」
「ん?」
「俺にありがとうは?まだ言ってもらってないんだけど」
「さぁて、そろそろお弁当にしようかなぁ」
「おーい」
どうやら僕にお礼を言う気はないらしいので、素直にお弁当の時間を始めることにした。
大き目のトートバッグから登場したのは、二段のお重になったお弁当箱だった。
「はいっ」
と玉手箱を開けるような手つきでふたを開けると、懐かしいハルのお弁当の匂いがした。
唐揚げにエビフライにおいなりさん。僕の好物でびっしり埋め尽くされていた。
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