最終章 七里ヶ浜

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「私、バカみたいに毎日研究したんだから。おばあちゃんに碧樹の好きな味を聞いたり、調味料工夫したり、のり巻いたり、ウィンナー入れたり、思いつく限りのことをやったんだよ」 「うん、知ってる」 「え?知ってるって、なんで?」 「ナツに聞いたよ。いっぱい試食させられたって」 「ええっ!碧樹ナツと話したの?」 「ははっ話したどころか、毎日一緒にいたんだよ。あんなの子供の時以来だな」 僕はハルの妹の夏菜と一緒にいた、ハルの病室での日々を思い出していた。 あの日、砂浜に駆け付けたレスキューの救急隊員により、救命処置をされて病院へ運ばれたハル。 自発呼吸はあるものの、意識が戻らない状態が続いていた。 毎日病室へ通う僕は、そこでナツとよく顔を合わせた。 ナツは僕たちの二歳下で、今は中学三年。 子供の頃から習っていたピアノに才能があり、音楽コースのある私立の中高一貫の学校へ通っている。小さい頃はよく一緒に遊んだけど、僕とハルが中学に進学した頃からあまり僕とは会わなくなっていた。ハルに比べると大人しい性格で、活動的なハルとは対照的な姉妹だった。
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