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始めは罪悪感だったのかもしれない。
母親を亡くした幼馴染への同情だったのかもしれない。
そうだとしても、それだけで十年も続けられるだろうか。
見返りも感謝の言葉も求めずに、ただ僕が毎日元気に過ごせるようにと尽くしてくれた。
そして、そのことを僕が負担に感じないように、あえてあの夜を思い出させることもしなかったんだろう。
今更ながらハルの想いの深さに気付かされて、自分の幼さに飽きれてしまう。
なんて子供で、自分の事しか考えていなかったんだろう。
ハルの気持ちなんて全く考えずに、鬱陶しいとまで思っていたなんて。
「だから、突然お弁当いらないって言われた時、抜け殻だったよ。癖で早起きしちゃうからって早朝のバイト始めたり、突然サーフィン始めたり。何迷走してんのって思ったけど、お姉ちゃんは自分のやりたいことを探しているんだよってママに言われて」
「……」
「ナツにはピアノがあっていいなぁって、お姉ちゃんに初めて言われた。知らない男の子と遊び始めた時はどうしようと思ったけどね。もぅあおくん何やってんのって怒鳴り込んでやりたかったんだから」
「あー、あいつのことは殴っといた。もう大丈夫だろ」
同じぐらい殴り返されたことは言わないでおく。
「へぇそうなんだ。やっぱり頼りになるんだなぁ。今回もお姉ちゃんを助けてくれたのはあおくんだったし…ねぇ、あおくん…」
そう言うとナツは急に涙ぐんだ。
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