残した留守電を貴方に

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彼女の“自信作 ”は、一言で言うととても綺麗だった。 儚く、乱暴に扱うと壊れてしまいそうな。 それでいて芯はしっかりと紡がれてゆく音色。 彼女に僕は、思った事を全て話した。 自信作と呼ばれるにふさわしい曲だと、だから、気に病むことなどないと。 ありがとう、と話す彼女は顔が見えずとも笑っているように感じた。 自信もどうやら取り戻せたらしかった。 けれど僕はまだ、彼女に話していない事があった。 『あのさ』 それを言ってしまおうかと思った。 『ん?どうしたの?』 唐突に、彼女の顔が見たくなる。 いや、これは電話ではなく…、顔を見て話したい。 それに今大きな事を控えている彼女を僕のせいで混乱させたくないというのもあった。 『いや…、月曜に話すよ。明日頑張ってこい。』 『う、うん…? わ、分かった、ありがと。』 この時、僕は想いを伝えるべきだったのか。 そうすれば彼女を待たせる事なく…。 直前に留守電話に告白を遺したりなどせずに済んだかもしれない。 長い間思案し続けた。しかし、どちらに転がったとしても運命が残酷な事に変わりはなかったのだと思う。
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