1章

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1章

僕が今の通信会社に入社して7年目の時だった。 中小企業であるが将来性を考え人材確保の為、積極的に若い人材を採用し、社内改革に取り組みだしたその年の4月付けに田代ユウナは商業高校を卒業し総務部に配属された。 毎年恒例だが新入社員の挨拶は食堂で行われる為、社員は始業開始の8時前には集まる。 中小企業ではあるが社員数は150近く居る為食堂はキツキツになる。用を足してる内、出だしが遅れ僕は後ろ端のドア付近で立って待つことにした。 キョロキョロしている僕に気づいた則本が肩を叩いてきた。 「おい、なるべく前に行こうぜ。何てたって今年は女性が入るんだぜどんなかワクワクするやんか」唯一僕の名前を下で呼ぶ則本に言われるがまま会釈しながら人混みを抜け真ん中付近に到着した。 「ここが一番見やすい位置だが今回は俺らより背が高い奴らが前に居る性で少し見にくいな」首をかしげながら僕に言うが新入社員が見えようが見えまいが気にかけてはなかった。 「則本、遅くねえか。もう10分経ってるのにまだ入ってこねえなんて。今日取引先と打ち合わせあるから早く資料作らないと間に合わないてのによ」 「まあ、そんな焦るなよ。慌てるコジキは貰いが少ないってことわざあるようにセカセカすると給料少なくなるぞ」セカセカはしてるかもしれないが給料と関係ないと笑いながら切り返した。 社長が入ってくると否や食堂は緊張感に包まれる。 総務部長の開式の式辞と共に新入社員が入ってくる足音は聞こえるが前の社員達も左右に体を動かし視界を封じられる。君が挨拶をした時初めて君の姿が目に映る。一瞬で胸が熱くなり鼓動が脈打つ。誰もが振り返るそんな女性ではないがセミロングの艶やかな黒髮、僕好みの丸顔、透き通った声、僕はまともにその顔を見続ける事はできなかった。傷跡のように深く刻まれた。 それが君の第一印象だった。 僕はモテない方ではない。イケメンでもないが多少女性にはチヤホヤされる方で女性との付き合いは人並みより多いと周りには言われている。 入社して少しずつ君は社員と打ち解けている印象が僕の脳裏に焼きつき帰宅しても忘れられない。 君に出会い僕の恋愛体質は変化した。 人を好きになりすぎると話かけられない、そしてネガティブな思考が頭を巡る。自分が君の事を好きだという事が周りにはバレないように君の素性は少し入手していた。そう彼氏がいない事。
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