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血を洗い流して家の中へ戻ると、彼女は大鍋で何かを煮込んでいた。
「母さま」
「あら坊、ちゃんと洗えた?」
声をかければ、彼女は大鍋から目を離して振り向く。
こちらを見る紫の瞳はやはり妖しい輝きを持っている。
「もう子どもではないんですから。洗い残しなどありませんよ」
そう? と彼女は首を傾げる。
永遠を生きる彼女にとってはいつまで子どもでしかないのだ。
吸い寄せられるように彼女の後ろに立つと、そのまま包み込むように抱きしめた。
己の胸ほどもない身長はすっぽりと収まる。
初めて出会った頃、見上げるばかりだった彼女は、今やこんなにも小さい。小さくて、けれど恐ろしい魔女。
「もう、坊ったら甘えん坊さんね」
くすくすとやはり子ども扱いするように彼女は笑う。
「うん……」
それ以上は何も言わずに、すぐ下に見える彼女の頭頂部に口づけを落とした。
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