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「シェリル」
鍋つかみでマフィンを持ったお姉ちゃんに声をかけられて、ハッとした。
「はい。これ、味見して」
ポンっとマフィンを渡される。
「あっつ!」
あまりの熱さに落としそうになった。
「もう、急に渡さないでよ。やけどしちゃうよ」
長時間持たないようにポンポンと宙に浮かせ、フーフー息を吹きかける。
「誰のこと、考えてたの?」
お姉ちゃんがニヤニヤして聞いてきた。
「べつに、誰のことも考えてないよ」
リアムのことって言ったら、何か言われそうで言わなかった。
「あら、そうなの?」
意地悪な顔でお姉ちゃんは言う。それにちょっとムカついた。
違うのに……。
でも、それを言ったら、きっとお姉ちゃんはもっとからかってくる。
「はやく味見してよ」
笑顔でそう言うお姉ちゃんは頭にきたけど、息を吹きかけながら食べた。
「うわ、めっちゃおいしい」
ホクホク、ふわふわで、口に入れると甘いチョコの味もする。
「できたてはおいしいわよ」
嬉しそうにお姉ちゃんは言った。
「これ、お客さんに出すの?」
マフィンを食べながら聞く。
「これは村のみんなの分。温かいうちに渡してくるわ。包むの手伝ってくれる?」
「うん」
うなずいて、急いでマフィンを食べると、お姉ちゃんがバスケットにマフィンを詰めるのを手伝った。それが終わると、お姉ちゃんは出かける支度を済ませ、バスケットを小脇に抱える。
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