1 チョコレートマフィン

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「シェリル」  鍋つかみでマフィンを持ったお姉ちゃんに声をかけられて、ハッとした。 「はい。これ、味見して」  ポンっとマフィンを渡される。 「あっつ!」  あまりの熱さに落としそうになった。 「もう、急に渡さないでよ。やけどしちゃうよ」  長時間持たないようにポンポンと宙に浮かせ、フーフー息を吹きかける。 「誰のこと、考えてたの?」  お姉ちゃんがニヤニヤして聞いてきた。 「べつに、誰のことも考えてないよ」  リアムのことって言ったら、何か言われそうで言わなかった。 「あら、そうなの?」  意地悪な顔でお姉ちゃんは言う。それにちょっとムカついた。  違うのに……。  でも、それを言ったら、きっとお姉ちゃんはもっとからかってくる。 「はやく味見してよ」  笑顔でそう言うお姉ちゃんは頭にきたけど、息を吹きかけながら食べた。 「うわ、めっちゃおいしい」  ホクホク、ふわふわで、口に入れると甘いチョコの味もする。 「できたてはおいしいわよ」  嬉しそうにお姉ちゃんは言った。 「これ、お客さんに出すの?」  マフィンを食べながら聞く。 「これは村のみんなの分。温かいうちに渡してくるわ。包むの手伝ってくれる?」 「うん」  うなずいて、急いでマフィンを食べると、お姉ちゃんがバスケットにマフィンを詰めるのを手伝った。それが終わると、お姉ちゃんは出かける支度を済ませ、バスケットを小脇に抱える。
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