1 チョコレートマフィン

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「じゃあ、私は配ってくるから。留守中、オーブンを使ってもいいわよ」  ニコニコとお姉ちゃんは言う。 「……私にお客さんの分を作れってこと?」  ニコニコと、なに気に面倒なことを押し付けようとしているのか? 「違うわよ。それは帰ってから私が作るわ」  わざとらしいくらいニコニコしてて気持ち悪い。 「バレンタインなんだから、リアムの分に決まってるでしょ」 「え?」  なんで私がリアムの分を? 「純粋なチョコじゃないんだから、作って渡せばいいじゃない」  ニコニコとお姉ちゃんは言った。 「作んないよ」  なんで私が……。 「レシピは掲示板に貼ってあるから、分量をきちっと計れば初めてでもできるわよ。材料は出っぱなしになってるからそれを使いなさい。まだお客さんの分とウチの分は作ってないから、その分は残しておいてね」  お姉ちゃんは早口に言う。  ひとの話、聞くつもりないよね。  ニコニコしてたけど、ミランダお姉ちゃんとは違う底意地の悪い顔に見えた。  ムッとした顔で見ていると、お姉ちゃんは楽しそうにバスケットを抱えて出て行った。  ぜったい、お姉ちゃんの言う通りになんてしないんだから。
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