1 チョコレートマフィン

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「今日は久しぶりにお客様が泊まってるでしょ。だからデザートにチョコマフィンでも出そうかなって思ったの」  にこにことブレンダお姉ちゃんは言った。3カ月ぶりくらいに、4人の冒険者パーティが泊まっていた。  言われてオーブンを見ると、火の入ったオーブンから、チョコレートの甘い香りがしていた。 「なんで、チョコマフィン?」  いつもならデザートはフルーツのお菓子が多い。 「だって今日はバレンタインじゃない?」  嬉しそうにお姉ちゃんは言った。  お姉ちゃんからそんな言葉が出てくるとは思わなかった。バレンタインは好きな人にチョコレートをあげるお祭りだそうだ。 「お姉ちゃん、あの冒険者さんたちが好きなの? やめなよ。ごっついおっさんばっかりだよ」  いい人っぽいんだけど、恐そうな人たちだった。 「ただのお祭りよ。ちゃんとしたチョコじゃないし、村のみんなにもあげるつもり。だから、いいんじゃない?」  ニコニコとお姉ちゃんは言う。危機感、ゼロだった。 「モテなさそうなのばっかりだったよ。絶対勘違いするって」  オーブンに入ったマフィンは純粋なチョコではない。でも、匂いはチョコで、甘くてとってもおいしそうだった。
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