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「浮気の心配はありそうだったね」
その冒険者はイケメンな勇者っぽい人だった。ぽいだけで、勇者でもなんでもなかったけど。
「今度はそういう心配がなさそうでしょ」
お姉ちゃんはオーブンの中を見ながらにっこりと笑う。
「浮気しないからあれでいいってこと?」
なんだかピンとこなかった。
「違うわよ。そういう話にならないって感じ」
そう言ってお姉ちゃんは無地のオーブンミトンを両手にはめる。
「ふーん」
そのわりに、お姉ちゃんは楽しそうだ。
ホントにそう思っているんだろうか? お姉ちゃんはあの人たちの方が、イケメンなんちゃって勇者よりもいいって思ってるんじゃないかな?
じゃなきゃ、チョコマフィンなんて作らない気がする。
彼らは満身創痍で現れ、ウチに泊まると元気を回復した。そして、魔王の城の攻略のために、この辺りを散策している。
魔王の城に入るには、まず、門番を倒さなければならない。
ただ、この門番はめちゃめちゃ強い。
いままでの強さでは敵わず、この辺りで魔物を倒して少しずつ力をつけている。堅実に魔王の城を目指すパーティのようだ。
その間、ウチに泊まってくれるから、ウチとしては助かる。
この門番はウチの宿屋やミスティ村にかなりの恩恵を施してくれていた。
この門番を、幼なじみのリアムはモリ―と勝手に呼んでいた。魔王の城の守り人だからモリー。ネーミングセンスを疑いたくなるけど。
リアムは最もこのモリ―と戦っているだろう。
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