六話 動き出した歯車

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「ね。優希ちゃんさえ良かったら、僕と付き合ってみない?」 「……え?」 ハヤト先生の言葉に、隠すことなく自分の笑顔が引きつったのがわかった。 「あの頃は優希ちゃんが高校生で、僕は大人で……付き合うことは出来なかったけど。こうしてまた会えたのも、何かの縁だと思うんだ」 私は高校生の時、この人のことが好きだった。 子供だからとまともに取り合ってもくれなかったくせに、私の成熟した体だけを求めてきた、ハヤト先生。 「……ごめん、なさい」 きっと、あの頃の私なら喜んで頷いていただろう。 けれど、私は大人になって、知らなくてもいいことばかり、たくさん知ってしまった。 私はまた、ミルクティーに視線を落とした。 「残念だなぁ」 ちっとも残念そうではないその響きに、顔を上げることは出来なかった。 今、彼の顔を見てしまったら泣いてしまいそうだったから。
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