序章 いつも僕は二人だった。

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 ホント、よくできてるよね。これ。  この物資欠乏状態の中で、防衛軍はどうやってコレ作ったんだろう?  友希は小首を傾げて不思議に思った。 ≪どうかしたの、ユキ≫ 「うん?大丈夫、何でもないよ♪」  友希は笑顔を仮想コンソール上に映し出された、CG少女の心配そうな顔に微笑んだ。  軍事用AIは開発されてから余り日が立っていない。  その開発速度を急速に加速させたのは、あの『黒い月』のせいで地球に一切の恵みの光をもたらさなくなってからで、つまりは全人類が生存競争を活性化させたのが原因だったと聞いている。  前作の『22式』や『22式改』とは、てんで比べ物になんないや。  ひと月前まで搭乗していた?22式改B型?の、古代ローマ時代の重装歩兵みたいな無骨な外観と、冗談の一つも言えやしなかったこれまた無骨なAIとのやり取りを思い出し、思わずヘッドアップサポーター独特の、頭全体を包む薄く透明な皮膜の中で苦笑してしまう。 ≪どうしたの?外で何かいいことでもあったのかな?≫ 「ううん、ちょっと前のリンネの事を思い出しただけだよ」 《前の?ああ、堅物だったっていうアレかな?》 「そう、それだよ」     
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