序章 いつも僕は二人だった。

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 クスクス僕は笑う。こんな何気ない会話もアレには荷が重すぎたからね。  実は『リンネ』というAIの名前は正式なモノじゃない。僕が勝手に『彼女』に名付けさせてもらったモノだ。 ≪それはそうとねユキ。目標高度にドローンが到達したみたいだよ。通信、始めちゃってもいいかな?≫  軽い口調で任務の再開を僕に促してきたリンネに、僕は「うん」と返事して頷き、通信を開始する様にリンネに指示したのだ。 「10(ひとまる)、10(ひとまる)、こちら26(ふたろく)、26(ふたろく)、送れ」  ザ…シャ……ザァ~……。と、携帯無線からの微かなノイズが僕の耳を短期間支配するのはいつもの事。 『……6、26、こちら10、10、感度良好問題なし、送れ』 ここより40Km程離れた地点に指揮拠点を構える、87式偵察警戒車からの返事が届く。 「こちら26、ポイントBY37Dに人影無し。繰り返す、BY37Dに人影無し、送れ」 『…こちら10、位置及び知覚情報確認した。速やかにポイントBY38Aに移動せられたし、送れ』 「こちら26了解、ポイントBY37Aに移動を開始する。終わり」     
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