序章 いつも僕は二人だった。

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 興奮する僕の駆る24式装甲機動体は、リンネの確かな計算のもと、路上の様々な障害物をまるでプロのスケーターみたいに軽やかに避けて疾走していく。 「やっぱ、先代の22式や22式改より動作がとってもスムーズだね。うん、乗っていて楽しいや」 軽快な機動を発揮するこの軽装甲機動体の元ネタは、パワーアシストスーツである。 パワーアシストスーツ、またはパワードスーツと日本では一般に呼ばれる機械は、人体の機能補助や体力強化などを目的に軍事用、作業用、医療介護用などの分野で、黒い月出現以前から研究され、一部では実用化されていたシステムでもあった。 これらのシステムは、かなり以前から空想科学上の分野では当然の存在として、確固たる地位を築いている代物ではあったが、実際には、実用可能な機材が登場したのが数年前とつい最近の事で、所謂、絵空事を実現した存在であった。 この夢が加速度的に発展を遂げるきっかけになったのが、謎の黒い月の出現による地球環境の激変と、それに伴う暴挙によって世界人口が激減してしまった為に、失われた労働力の補完と、数少ない人員での早急な食糧生産と経済活動の回復・防衛力の強化を求められたからだった。     
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