31人が本棚に入れています
本棚に追加
その真っ黒な機体は、此方にスコープをキューンと云う駆動音を発し向けながら、突然の事態に立ちすくんだ敵兵を躊躇なく掴み踏み、ひねり潰していく。
バッバッバッバッ…!
輸送機であるV22アスプリーが二機編隊で現れ、照明弾を左右に幾つも放ちながら、空挺団所属の機体と人員を機内から吐き出している。
空は、眩いばかりの光に満ち溢れ、そのなかを死神の群れがゆっくりと大地に降りたち、地上の、あらゆる生きとし生けるものを冥府へと誘っていく。
「大丈夫か、2曹」
1曹の階級章を付けたおっさんの空挺隊員が声を掛けてきた。
「…生きてますよ」
「そうか、よく生き残ったな。立てるか」
1曹のおっさんと2曹のおっさんが二人、肩を貸そうと僕の上体を起こそうとする。
「…そ、それよりも、彼女を…助けてくれませんか」
「彼女、とは?」
1曹のおっさんが首を傾げる。
「そこの盛り上がった…土の上に、要救助者が…いる…筈です」
「わかった」
2曹のおっさんが銃を構え、機敏な動作で彼女が横たわっていた辺りに近付き様子を探る。
「ホントにここに?」
「そう…です」
1曹のおっさんに抱えられ何とか右足で立ち上がった僕は、全身から湧き上がって来た痛みに耐えながら応える。
「村上士長と木村3曹、こっちに来てくれないか」
最初のコメントを投稿しよう!