見通せぬ暗闇。

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見通せぬ暗闇。

 ココ、天井が低いな。  アスプリーに回収された僕は直ぐに気を失い、目覚めた時には旧静岡市の市庁舎前に設置されている、テント張りの防衛軍第112野戦病院の安っぽい簡易ベットの上であった。 ≪あれからもう、五日もたったんだね≫  破壊された機体から回収に成功したリンネは、僕が持ってるのと同じ借り物のノートPCに挿入されて活動を開始していた。  そして僕話と云えば、貸与された桜マークに三本線の入った、真新しい戦闘服に縫い付けられた階級章をライトにかざして眺めていた。  地獄の様な台地上の戦場をたった一人生き残った僕に、軍から1曹昇進の伝達があったのは、ついさっきの事だ。 「ここにきて、目覚めていきなり昇進だなんていわれても、なんになるのかなぁ」 ≪あの子も消息不明のままらしいよ≫ 「また僕は、民間人を守れなかったというわけだね」 結局、空挺団が懸命の捜索したにも関わらず、彼女は安否は不明のままだった。  これで何度目だろうか、民間人の盾になろうと誓い、黒い月の所為で亡くなった両親の敵討ちを誓い、なによりご飯にありつけるから15歳で入隊してからこっち、やって来たことと云えば殺戮の繰り返しだけだった。     
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